透析液
 

 血液透析療法では、拡散の原理を応用し、尿毒素の除去、電解質

および酸塩基平衡の是正を行っています。その対応液として透析液

が使用されます。透析液は、酢酸ナトリウム透析液と重炭酸ナトリ

ウム透析液との2種類あるが、アルカリ化剤の組成が酢酸もしくは

重炭酸で、現在大部分の施設が重炭酸ナトリウム透析液を使用しています。


Na濃度

 透析液のNa濃度の変化より、治療中の血圧変動に対する影響は大きく、血圧低下防止に高Na透析を行うこともある。個人用透析装置では、濃度調整が容易に行えるが、多くの施設では、多人数供給装置を使用していることから、専用装置を必要とする。高性能の透析膜の開発により、体内Naを拡散から濾過により除去するようになり、透析液Na濃度が徐々に高くなり、142〜145mEq/ℓで行われるようになってきた。ただし血圧上昇する症例は、注意する必要があります。


K濃度

 高K血症の是正のため、2.0mEq/lに調整されている。血液PHにより濃度が変動し、拡散による除去の他に、酸塩基平衡の是正により低下する。食事摂取の困難な症例など、透析により低K血症を起こさないよう注意しなければなりません。


Ca濃度

高リン血症を防ぐ目的にアルミウム製剤をリン吸着剤として投与され、透析液よりCaを補給していたが、アルミニウムの蓄積により合併症を引き起こすことから、カルシウム製剤が使用されている。カルシウム製剤の投与により、血中カルシウム濃度が高値に呈するため、透析液のCa濃度を抑えるようになり、2.5mEq/l前後に調整されています。


重炭酸ナトリウム

 老廃物の蓄積などで酸性になった体内環境をアルカリ化剤として重炭酸ナトリウムを用いて弱アルカリ性に是正する目的で使用されています。

 リン吸着剤に代用されるカルシウム製剤により血中カルシウム濃度が高値となり、透析による酸塩基平衡の是正がカルシウム石灰化を引き起こす原因となるため、透析液のHCO3濃度が25mEq/lに調整されています。


ブドウ糖

 腎不全の原疾患のなかで糖尿病が増加しているこのため、インスリンを投与している症例では、透析中、低血糖症状を起こすことがあるため、100mg/dlに調整されています。


マグネシウム

 透析患者の血中マグネシウムは高値であるため、副甲状腺ホルモンの分泌を抑制する可能性があり、透析により除去され欠乏すると、神経系や心機能に影響があるため、1.0〜1.5mg/dlに調整されています。


粉末透析製剤

 透析原液は、10ℓの容器に保存されており、多人数用供給装置で使用する際、原液タンクに貯留し使用されましたが、水処理工程や配管内の細菌、エンドトキシンの汚染が依然問題となっています。特に透析液炭酸水素ナトリウムは、細菌の繁殖しやすい環境なため、液状から粉末剤にし、使用直前に溶解するような方式がとられるようになってきています。

 また、細菌汚染防止だけでなく、スペースの確保、容器の廃棄処理などの軽減にもつながっています。